「すごくいいふつうを、つくる。」をコーポレートメッセージとする企業、KDDIエボルバの代表取締役社長・若槻肇が、著名人との対話を通じて、「すごくいいふつう」を体現する人の真髄に迫ります。
ご登場いただくのは、ワークマン専務取締役・土屋哲雄氏。
作業服小売市場でN0.1のシェアを誇るワークマン。2018年にオープンした「ワークマンプラス」や「#ワークマン女子」などの新業態、アウトドアなどにも使える新商品を開発することで、新たな顧客層を次々と開拓し、急成長しています。
その立役者の一人が、土屋氏です。新業態や新商品が生まれた背景には、土屋氏が打ち出した「もっとしない経営」がありました。
現在の姿へとワークマンを進化させた改革への道のり、「もっとしない経営」とは何か。そして改革の先にある「すごくいいふつう」がつくる未来とは。
ワークマン・土屋哲雄氏にKDDIエボルバ・若槻肇が切り込みます。
株式会社ワークマン
専務取締役
土屋哲雄氏
1952年生まれ。東京大学経済学部卒業後、75年三井物産株式会社に入社。88年、三井物産デジタル株式会社を設立し、代表取締役社長に就任。2006年、三井情報開発株式会社(現・三井情報株式会社) 取締役執行役員などを経て、12年4月に株式会社ワークマン入社。6月に同社常務取締役。19年6月から現職。2022年7月に東北大学特任教授就任。
株式会社KDDIエボルバ
代表取締役社長
若槻肇
1963年生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、88年、日本移動通信株式会社(現・KDDI株式会社)に入社。2013年に、KDDI株式会社 コンシューマ営業本部 チャネル戦略部長、16年に同本部 コンシューマ東北支社長に就任。その後、18年にカスタマーサービス本部長、19年に理事を経て、2020年より株式会社KDDIエボルバ 代表取締役社長に就任。
若槻肇(以下、若槻)
私たちKDDIエボルバはコンタクトセンターやDXを推進するITアウトソーシングなどのBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)を手がける会社です。親会社であるKDDIの仕事だけでなく、KDDIグループ外の企業様とのお取引も多く、現在はお客さまの4割強を占めています。
レッドオーシャンであるBPO業界の顧客獲得競争に勝ち抜くためには、28,000人の社員一人ひとりの能力やオペレーションを高めていくことが重要です。
そこで、現在躍進されているワークマンさんからさまざまなヒントをいただきたいと考えています。
また、経営者はもちろん、リーダー職やマネージャー職に就くビジネスパーソンの方々にとっても、新たなビジネスアイデアを生み出すための気づきや、マネジメント業務の参考になるお話が伺えるのではと思っています。
今日はよろしくお願いいたします。
土屋哲雄(以下、土屋)
よろしくお願いいたします。
若槻
土屋さんはワークマンに入社する前は、どのような事業を手がけていたのですか?
土屋
以前は三井物産に30数年間勤めてきて、中国人向けのワープロ開発に始まり、微細文字レーザープリンタやボウリング場のオンライン採点装置、スポーツフォームの分析装置など、さまざまな事業開発を好き勝手におこなっていました。
その後、2006年からの三井情報開発時代には、ゼロからコンサルティング事業を立ち上げ、事業の柱の一つに育て上げたりもしました。
若槻
その後、今から約10年前にワークマンさんに入社されたと。きっかけは何だったのですか?
土屋
ワークマンの創業者であり叔父でもある土屋嘉雄会長(当時)に呼ばれたことです。ただ、「何もしなくていい」と言われていたので、しばらく観察していました。
若槻
ワークマンについてはどう思われましたか?
土屋
最初はこれまでの職場で接してきた人達とタイプが違いすぎて宇宙人を見ているかのようでした(笑)。しかし、観察して2年ほど経ったときに、「この会社はすごいな」と気づきました。
作業服の小売市場で32年間ずっとシェア1位を取り続けていたのですが、30年以上、同じ市場で、変わらぬ方法で事業をやり続けていました。にもかかわらず、社員の士気が高い。チームワークが良く、現場の細かい改善をコツコツと行い続けている。飽きっぽい私にとっては考えられませんでした。
ただ、作業服の市場の伸びは鈍化するのは目に見えていました。作業服の市場規模は1000億円程度と見込まれていましたから、このままのペースだと、あと8年で市場を食い尽くすと予測されていたんです。この先どうするのか、と当時の社長に聞いても、「いや、それはわからない」と。
コツコツ改善をするオペレーションが得意な会社ではあるものの、トップダウンを基本とする忖度型ヒエラルキーの会社だったので、新しいことを考えて実行するのは苦手だったのですね。
しかし、新しいことをしなければ、成長が止まってしまいます。そこで改革に乗り出すことにしました。
若槻
改革をする上で、土屋さんはどのようなことを心がけたのでしょうか。
土屋
ポジティブアプローチでいこうと考えました。
改革というと、世の中の会社はネガティブアプローチで挑む会社が多いのではないかと思います。「この会社は茹でガエルで、知らないうちに茹だって死んでしまう」などといって、会社の問題点を10個も20個も挙げて、それを一つずつ変えていこうとする。
しかし、ネガティブなマインドで改革に臨むと、社員たちの力が出ません。それどころか長所をつぶしてしまうおそれもあります。
それなら、あまりガツガツしないで自然体のポジティブアプローチで、良いところだけを伸ばしていく。そのほうが社員のモチベーションが上がるし、会社は成長するのではないかと考えました。
SPECIAL | 特集
2022/10/13
【武田双雲さんの「ポジティブ」の秘訣】ルールを踏襲することができない「異端児」がルールを壊し枠組みを広げる「革命児」に
若槻
ポジティブアプローチで具体的にどのような改革をおこなわれたのでしょうか。
土屋
それが「もっとしない経営」です。もともとワークマンは「しない経営」によって成長してきた会社です。需要の大きい法人相手の商売をしないで個人のお客さまに特化してきたことや、常に低価格で販売する一方で値引きをしないことは、その典型的な例ですね。
その長所をポジティブにとらえて、より進化させた「もっとしない経営」をしようと考えました。
若槻
具体的には何から始めたのですか?
土屋
社員にプレッシャーがかかるようなことを「しない」ようにしました。何か改革しようとすると、社員は先行きが不安になるものです。ましてワークマンは忖度型ヒエラルキーの会社で、コツコツ改善するのが強みだったので、改革に慣れていません。そこでプレッシャーがかかるようなことを避けて、気がついたら改革が実現していたという状態を目指しました。
若槻
何をしないようにしたのですか。
土屋
まずは「期限」と「ノルマ」を設定しないようにしました。たとえば新商品の開発については、いつまでにという期限はありません。またどれぐらい売るかというノルマも設定しません。情報システムの構築に関しても同じです。新店舗の開業日も、予定日はありますが、社員が無理をしなくてはならない場合は、日程を伸ばすこともあります。
若槻
どの会社でも期限とノルマを設定するのは当たり前です。それをなくすとは大胆ですね。
土屋
私も商社にいた頃は期限とノルマに追われていました。しかし、期限やノルマがあると、社員はそれを達成することにプレッシャーを感じ、仕事の質を落とすことがあります。あるいは、上司から頼まれた急ぎの仕事を優先して、お客さまのことを後回しにした結果クレームが発生する、といった困ったことを引き起こすこともあります。
それなら、期限とノルマをなくして、じっくり取組んでもらったほうがいいのではないかと考えたのです。
さらには、権限を委譲して、自由に仕事をしてもらうようにしました。たとえば新商品の開発は担当者に一任し、幹部が商品の詳細を知るのは製品発表会のとき。そこまでの過程では一切口を挟みません。
弊社の店舗は基本的にFCで、細かなマニュアルを設けているのですが、SV(スーパーバイザー)には店長と相談してOKが出たら、自分たちの判断でマニュアルと違うことをしても良いといっています。
本部がすることは、各店舗で実践してあがってきたアイデアを検証し、それを全国に横展開するかどうかの判断だけ。いわば、利用者側の端末やその近くに設置されたサーバーでデータを処理するネットワーク技法「エッジコンピューティング」のようなものです。本部という大元のサーバーで処理をする必要がないということです。
若槻
期限もノルマもなく、自由に働いてもらった結果、うまくいったということでしょうか?
土屋
はい。実践してわかったのですが、そのほうが、大きな成果が出ますし、物事が早く進みます。
たとえば新商品開発でいえば、自由にすると、開発者同士が競争するんですよ。デザインにこだわる人、安さで驚かせる人、機能で差をつける人、皆が個性を発揮してどんどん新しいものをつくるんです。
誰も強制していませんが、自宅でも商品の機能やデザインの案を練っているようです。残業は奨励しませんが、自分で動きたい人に動くなと止めるのは社員にとっては迷惑な話。やりたいだけやらせてあげたほうがいいと考えています。
若槻
権限委譲をしたいと思うものの、ついつい口を出してしまいますよね。新商品開発は発売前に一度は見たいところですし。製品発表まで見ないのはスリリングですね(笑)。
土屋
ただ、失敗しても問題ないような仕組みはつくっていますよ。新商品は予想販売量の半分しかつくりません。これなら売れなくても大きなダメージを被らずに済みます。
仕事ができる人ほど口を出すものですが、口を出すとろくなことはありません。私などは自分が言っていることは半分間違っていると公言していて、ほとんど何も言わないようにしています。凡人経営ですね。
今の日本の会社はグローバルスタンダードといってトップダウンの改革ばかりしていますが、実はそれが日本の会社が悪くなった原因だと私は分析しています。会社を良くするなら、現場に権限を与えてお客さまのためになることを考えてもらったほうがいいと思います。
若槻
もともと新しいことを考えるのが苦手な社員が集まっていたとのことですが、期限とノルマをなくして、権限を委譲すれば、社員は変わるものでしょうか?
土屋
それだけではなかなか変わりません。そこで導入したのが「エクセル経営」です。
端的にいえば、知恵を集めて平等に議論するためのコミュニケーションツールとしてエクセルを用い、社員全員がデータを使って経営に参画する仕組みです。
新商品にしても、オペレーションの改善にしても、データをもとに議論すれば、上司の勘が入り込む余地がなくなります。すると、年次や役職に関係なく、上司に忖度しないで、誰とでも平等に議論できるようになります。
高度なデータ分析ソフトを使うと、一部の専門知識を持った人材しか活用できなくなります。そこで誰でも使えるようにとエクセルを使ったのです。エクセルでもデータをまとめれば、「○○だと✕✕が売れる」といった相関関係は見つけ出せます。
若槻
エクセルでデータ分析をするには、ある程度、統計学的な分析手法を学ぶ必要があると思います。どうやって社員に浸透させていったのでしょうか。
土屋
これもまた「しない経営」です。社員に強制しないで、希望者だけが覚えてもらうようにしました。
まずは分析チームをつくり、入りたい人を募りました。そのメンバーたちに、店舗で実験をしてもらいデータを検証した結果を、月1回発表してもらいました。
すると「自分にも教えて欲しい」という社員が増えてきたので、この分析チームの人たちが社内講師となって研修をおこなうようになったのです。
研修後は試験をするのですが、実はその試験を簡単にし、誰でも90点は取れるレベルにしていました。「自分はデータ分析が得意だ」と自信をつけてもらうためです。
データ分析をきっかけに、IT関係の資格を取得する人も増えてきました。そこで支援制度をつくり、資格を取得したらその受験費用を援助するようにもしました。どの資格が良いかは社員に提案してもらい、すべて受け入れました。制度の発足から2年ほどさかのぼって支払いましたね。
若槻
今はどれぐらいの社員がエクセルを使いこなしているのですか?
土屋
3~4割が関数や統計の知識を持って、エクセルをバリバリ使っています。経営幹部はエクセルマニアでない人のほうが珍しく、毎日エクセルで計画を立てたり、シミュレーションをしたりしていますよ。
また、これまでコミュニケーションが苦手で評価が低かった人が、エクセルでデータを分析して良い提案をするようになり、社内での評価が変わりました。
希望者が多いので、今や社内研修はほぼデータ分析研修になっています。
若槻
すごい効果ですね!
土屋
ただ、ここまで来るのには10年かかりました。やはり改革はそんなに簡単にはできません。何年も時間をかけてゆっくり進むことが大切だと改めて感じます。
SPECIAL | 特集
2022/08/01
倒産の危機にあった老舗旅館を立て直した「陣屋」女将・宮﨑知子さんに学ぶ。DXとITで支えるデジタル時代のおもてなし術とは?
若槻
貴社が成長したのは、「機能的でリーズナブルなアウトドア用の服」というブルーオーシャンを見つけ出したことも大きな要因だと思います。どうやって見つけ出したのでしょうか。
土屋
「声」を聞いたことですね。
弊社の社是は「声のする方に進化する」。声といってもいろいろな人の声がありますが、お客さまの声を聞くことを重要視しています。
そこで始めたのが、「アンバサダーマーケティング」です。アンバサダーマーケティングとは、インスタグラムやYouTubeで専門分野に関する発信をしていて、閲覧数、視聴回数が5~10万回ある人にアンバサダーになってもらい、情報発信や製品開発に携わってもらう取り組みのことです。たとえば、アウトドアブロガーやモーターサイクルジャーナリスト、旅YouTuberなどを集めています。
若槻
なぜアンバサダーを活用しようとしたのですか?
土屋
やみくもに多くのお客さまの声を聞くよりも、代表者の声を聞いたほうが、お客さまのニーズがわかると考えたからです。
アウトドアブロガーであれば、自分もキャンプなどでさまざまな商品を使っているのに加え、アウトドアに興味のあるフォロワーと毎日会話をしているので、アウトドア好きのニーズをよくつかんでいます。たとえば「キャンプで今一番必要なテントは何か?」と聞けば、こちらが知りたいリアルな本音を語ってくれます。
その知見を用いて製品開発を進めれば、大きく失敗することはありません。アウトドア用の服や、今年から始めたテントや寝袋といったキャンプギアは100%アンバサダーの知見でつくっています。その結果、アンバサダーとともにつくった商品は30勝0敗です。
若槻
驚異的な勝率ですね!
土屋
アンバサダーの皆さんも、自分でつくったものを自慢したいですからね。ちゃんと宣伝もしてくれる。そうすると、商品を使った人の声がネット上に広がり、その評判を聞いた人がまた商品を使うという好循環ができ上がります。
かつてはマーケティングの世界では「ブランド」が重要視されていました。しかし、今のお客さまは、ブランドだけでは商品を購入しません。ブランドよりも大切なのは「評判」です。使った人の声を吟味した上で買うわけです。かつてはブランドを資産のようにストックしていくことが重要でしたが、今は評判をつくり出すことが重要だと思っております。
若槻
アンバサダーを活用すれば、さまざまなジャンルの商品がつくれそうですね。
土屋
ただ、気をつけたいのは、作業服と遠い分野の商品には手を出さないことです。そうしないと、これまで培ってきたノウハウや強みが活きません。
アウトドア用品に関しては、「過酷な環境の屋外で長時間活動する」という意味では作業服とまったく同じでしたから、愚直に培った作業服の技術がそのまま役立ちました。
また、「#ワークマン女子」で展開している女性向けのプリーツスカートは、汚れがすぐ落ちて撥水性のある作業服の生地を活用しているので、子供が汚れた手で触っても問題ないですし、パンプスも靴ずれを起こさない地下足袋の技術を使っています。どの商品にも我々の特技が活かされています。
若槻
「隣地必買」(自分の所有している土地の隣りの土地は、相場の倍出してでも買うべきである、という考え方で、地続きの土地を手に入れることで、土地の価値が1+1=2ではなく、3にも4になる可能性があるといわれている)が重要なのですね。
私たちも現状のコンタクトセンターのサービスから一歩進んだ価値を提供したいと考えているのですが、まずは今のリソースを活かすのが重要ですね。
土屋
そう思います。今のリソースを活かそうとするのも、現状を肯定するという意味ではポジティブアプローチですよね。
お客さまの声を聞くという意味でも、コンタクトセンターは最前線の顧客接点。製品やサービスの評判もお客さまが抱えている不満も、一番声が聞こえますから、さまざまな可能性がありますね。
若槻
まさにおっしゃる通りです。以前のコンタクトセンターは利益を生まないコストセンターでしたが、今ではプロフィットセンター化してきています。お客さまの声と日々接していることを活かして、お客さまのニーズを見つけ出す。クライアント企業様の要望をこなすだけでなく、価値を共創する新しいコンタクトセンターソリューションを提案していきたいと考えています。
若槻
土屋さんはワークマンの改革を見事成功させたわけですが、振り返ってみて改革に大切なことは何だと思いますか?
土屋
やはり「人」が重要だと思います。期限やノルマをなくせたのは、もともと社員の士気が高かったことも一つの要因でした。
期限やノルマがなくても、サボらないんですよ。社員同士が助け合うことを大切にする社風にも助けられました。
若槻
社員が助け合う風土は弊社もありますね。運用の現場ではお客さま対応で不明なことがあれば“手を挙げる”と直ぐにサポートを受けられますし、マニュアルで対処しきれないことも、皆で支え合ってやっています。
うちの社員は基本的に真面目なんです。やると決めたことはきちんとやる人が多い。それが発揮されるのは、コンタクトセンターの立ち上げ。営業やオペレーション、システムなど各部門の社員が力を合わせて、ものすごい集中力を発揮します。
土屋
それはすばらしい。ものすごい宝だと思いますよ。
弊社の新卒学生向けの採用ページには採用基準が書かれているのですが、1番目に掲げているのは「親切心」。FCの採用でも、経営者の人柄を重視しています。人柄が悪いとお客さまに悪影響を与えますからね。心さえあれば、形はどうにかなるものです。真面目な人が一つのことを脇目も振らずやることが一番成長します。
若槻
クライアント企業様に対してロイヤリティが高い社員が多いのも、弊社の特徴です。何年も問合せ業務に携わっていると、クライアント企業様の理念も全部頭に入っていて、その企業の社員であるかのようになってくるんですね。
土屋
会社の人間かクライアントの人間かわからなくなるほどのめり込むのは、良い兆候ですね。
若槻
その会社の名前を背負って誇りを見出すほうが、良い仕事ができますからね。私も「君はどっちの社員なんだ」という状態でいいと考えています。
今回、コロナ禍で医療従事者が「エッセンシャルワーカー」といわれましたが、私たちも社会基盤を支えるエッセンシャルワーカーだと考えています。リアル店舗での対面対応ができなくなり、メールや電話、チャットなどの顧客接点が重要となるなか、私たちコンタクトセンターの事業は生活に欠かせない存在でしたから。
コンタクトセンターは黒子の存在ではありますが、近年はあらゆる顧客接点を担い、お客さまの体験価値向上を実現する存在として重要性が認識されつつあります。社員たちには、この仕事に誇りを持ってほしいと考えています。
若槻
現在、弊社も3年間の中期経営計画をつくり、「付加価値提案型企業になろう」と改革を進めています。
土屋さんのおっしゃる通り、改革は社員にストレスがかかると思うのです。そこで「なぜ変えなければならないのか」という大義が必要だと考えました。
そこで掲げた新しいコーポレートメッセージが、「すごくいいふつうを、つくる。」です。
「すごくいいふつうを、つくる。」とは、事業を止められない企業様に代わって業務を継続し、世の中の「ふつう」を支える私たちだからこそできる、よりよい未来をつくることであり、それを実現していくという社員の総意を分かりやすい言葉で表現したものです。また、28,000人の社員が持つ多様性を認め合うことが私たちにとっての「ふつう」という意味も込めています。
土屋
おっしゃる通り、改革には大義が必要です。その意味で、「すごくいいふつうを、つくる。」は、良いキャッチコピーですね。自分が思う「すごくいい」に向かって自分で走っていくことが普通なのだと。普通を高めていくという意味もあったり、いろんな意味が読みとれますね。
若槻
ありがとうございます。「すごくいいふつうを、つくる。」ことは、社員の幸せにつながると考えています。では、どのように「すごくいいふつう」をつくっていけばよいか。それを自由闊達に議論する風土づくりをしているところです。
弊社にはミュージシャンや役者になる夢を持っていたり、何か資格取得を目指して勉強しながら働いていたり、とさまざまな社員がいます。そうした多種多様なバックグラウンドを持った人たちが、やりたいことをやれるような会社をつくることが、私の理想です。
そんな環境をつくるために、私は社長になったときに3つの約束をしました。「明るく楽しくやろう」「会社に誇りを持とう」「仕事はやりきる」の3つです。たとえ、他に夢があったとしても、せっかく長い時間会社にいるのだから、明るく楽しく誇りを持って、仕事にやりがいを見出してもらい、達成した喜びを分かち合ってほしいと思っています。
明るく楽しくなんて子供っぽいかな? と社員と話したら、思いのほか肯定してもらえたので、ありがたいと思いました。
SPECIAL|特集
2023/01/20
【お笑いコンビ「ラパルフェ」インタビュー】コールセンターで働きながら、お笑いの道へ―夢と生活の両立を可能にする職場とは!?
土屋
まさにポジティブアプローチですね。結局のところ、楽しくなければだめなんですよ。会社の雰囲気が悪かったら改革もヘチマもありません。楽しく働ける環境をつくり、良いところを引き出して、できた人を褒めれば、自信をつけて自律自走してくれます。お互いがんばりましょう。
若槻
今日はありがとうございました。
土屋
こちらこそ、ありがとうございました。
WRITTEN BY 杉山直隆(オフィス解体新書) / PHOTO BY 畠中彩