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何十人ものスタッフを束ね、大規模案件を受注せよ。

参入困難な自動車業界に風穴を

KDDIエボルバのコンタクトセンター事業は約22,000人のオペレーターを擁し、200社以上の導入実績を誇る。しかしながら、自動車業界のそれを受託したことはなかった。石黒はある外資系自動車メーカーと関係を構築し、新規参入が非常に困難だと言われている、自動車業界のコンペ参加資格の獲得にこぎ着ける。KDDIエボルバに又とないチャンスが訪れた。
それまでは別企業が10年以上そのメーカーのコンタクトセンターを運営していたが、先方の担当者と話したところ「何か新しい付加価値を提供したいという挑戦心を強く感じた」と石黒は当時を回想する。
そこで自動車業界が初めてであっても確実に業務を遂行できる「品質」と、付加価値を生み出せる「イノベーション」という二本柱で提案しようと決めた。
早速、できるだけ自動車業界に明るいスタッフに協力を仰ぎ、コンペを勝ち抜くためのチームを組んだ。そして先方の企業カルチャーを体感すべく、何箇所ものディーラーを巡回。現場の様子を肌で感じ、イメージを膨らませた。さらには先方の記事が掲載されている業界誌を入手し、メンバー全員で企業理解を深めていった。

イノベーションを想起させるコンタクトセンターへ打診

肝心なのがコンタクトセンターの選択だ。石黒は全国17拠点あるうち、一番イノベーションが起きそうな山形に白羽の矢を立てた。通常はビルの一室を間借りする場合がほとんどだが、山形のコンタクトセンターは自社ビルで、細部にまでこだわり抜いてデザインされている。センター長として、山形の立ち上げに参画したのが岡本だ。「コンタクトセンターは席数が多いほど売上を上げられますが、山形は敷地の1/3程度しか席を設けていない等、スタッフの働きやすさを追求しています」と力説する。空いたスペースにはカフェテリアやテラスなどを完備。まるで美術館のような建物になっていて、グッドデザイン賞も受賞している。
石黒が岡本にコンペの相談を持ちかけた当時、山形はまだ設立3年目であったが、すでに20社もの案件が稼働。さらにはAIを使ったチャットの、自動応答シナリオを作成する等、まさにイノベーションが起きている状態だった。「これは大きな武器になる」石黒はそう考えていた。

持ち前の調整力を駆使し難しい局面を打ち破る

外資系自動車メーカーの期待に応えるのは、一体どの企業か。コンタクトセンター業界が注目する中、コンペは7社からスタートした。1次審査は書類で5社が通過し、2次審査は提案書とプレゼンで評価される。
このコンペの難しいところは、まさに人との調整であった。提案書を作成するにあたっては、受注した場合にどれだけの電話やPCが必要で、どの様な体制で業務を遂行するかなど、システム部や品質管理部、山形の岡本らとシミュレーションを繰り返した。そうして調整を図りながら「品質」と「イノベーション」を訴求できる、100ページにも及ぶ提案書を完成させた。「石黒は40人近くいるメンバーの誰かしらから毎日呼び出され、まさに東奔西走していました。でもその甲斐あって提案内容が少しずつ纏まっていったんです」と岡本は当時を振り返る。結果、KDDIエボルバともう1社だけが最終審査に残った。

大規模案件を受注した確たる自信

最終審査は山形のセンター見学であった。石黒と岡本は前週にリハーサルを行うなど周到に準備し、当日に臨んだ。「上司を連れて来たいと思ってもらえるよう、最大限のおもてなしをしようと考えました」という岡本が先頭に立ち、1日かけてセンターを案内。途中、コンタクトセンターのスタッフに直接ヒアリングできる時間を設ける等、満足のいくツアーができた。
最終審査が終わってからも「(ヨーロッパにある)本社を説得するために、山形で仕事が成立する証明をしてくれ」等、様々な要望をいただいたが、その度に各部署と改めて調整を図り、一つひとつ丁寧に応えていった。
尚も先方の担当者から様々な資料の提出を依頼される中、何気ないタイミングで「御社に決めたから」と告げられた。コンペに勝利した瞬間である。石黒は肩の力が抜け、思わず安堵の表情を浮かべた。チームに伝えると各々の形で喜びを表現し、感動を分かち合った。これによって、KDDIエボルバの歴史にまた新たな1ページが加わることとなった。
何十人も関わるプロジェクトに初めて携わり、勝利をもぎ取った石黒は「未経験の業界、未経験の大規模案件で受注を獲得し、大きな自信がつきました。特に社内の人との調整の大切さをまざまざと感じ、それが今に活きています」とプロジェクトを通じての成長を頼もしく話してくれた。
稼働から1年が経ち、安定的な業務に先方の評価は高い。今後は車の販売につなげられるような、更なる「イノベーション」をもたらすサービスを提供したいと石黒たちは考えている。

操作性や視認性を向上させ、要望以上のシステムを開発するやりがい。

不安より期待が大きかった希望部署への異動

辻橋は移動体通信(携帯電話の仕組み)に興味がありながらも、固定回線を運用する部署に配属となった。しかし入社して半年が経つ頃、これまでのアピールが認められ、念願叶って移動体通信のシステム開発を手掛ける部署へ異動となった。
「サーバやアプリ等の専門知識や、優れた技術を有していたわけでもなく、自分に務まるか不安がありました。でも前の部署の先輩方と一緒の異動だったこともあり、期待のほうが大きかったですね」
辻橋は当時の心境を語る。
携帯電話事業には、電波を送出する「基地局」が不可欠だ。その基地局に関わる情報を、データベースで管理するシステムを開発するのが辻橋に課されたミッションだ。既にプロジェクトは立ち上がっており、前任者から引き継ぐ形でメンバーに加わった。
基地局業務に携わる人達は、日々システムを運用しながら業務を遂行している。そのため一度システムを構築すれば完了というわけではなく、新しい技術への対応やユーザーの要望を採り入れながら、さらに効率よく運用できるよう、カスタマイズを行わなければならない。

多機能ゆえの面白さと難しさ

辻橋に託されたのは、要件定義や基本設計といったいわゆる上流工程の業務だ。それに加え、リリース判定を行うためのテスト業務や、実際の開発を行う協力会社の工程管理も任された。
今回のシステムにはデータを「管理する」「収集する」「チェックする」「配信する」など、基地局業務に必要な多彩な機能が搭載されている。通常、1つのシステムには1つの機能しか無い場合が多いため、様々な機能に携われるこのプロジェクトのやりがいは格別だ。
しかし機能が複雑に絡んでいるゆえ、困難も多い。
「ある機能を改修する時には、それに関係する別の機能についても熟知しておかないと、問題を引き起こし兼ねません。そのため、はじめは覚えることが多く苦労しました」
文系出身の辻橋にも、先輩や上司が分かりやすく指導したことが大きな助けとなっただけでなく、作業場には検証装置があり、辻橋自身も時間を見つけてはそれで検証を繰り返すなど努力を積み重ね、各機能の動作を習得した。その結果、今では分からないことがほとんど無いくらいまで成長している。
ただ技術力を高めても、厚い壁として立ちはだかるのが先方の要望を汲む要件定義だ。相手の意向を確実に引き出し擦り合わせていかないと、思わぬ落とし穴にはまってしまう。要望通りに設計したつもりでも、違うものができあがってしまうのだ。実際、認識の相違で、画面に6つ表示してほしかった項目を5つにしてしまい、手戻りとなったこともあった。「お客様のニーズを100%捉えるのは難しいですが、なぜそうしたいのか、一歩踏み込んで聞き出す癖が身につきました」。最近では目的に沿って業務が進行しているか確認する余裕が生まれ、少しでも気になったことは必ず質問するようにしているという。

想像力を駆使しユーザビリティを向上させる

相手のニーズを満たした上で、機転を利かせた「+α」の機能を追加し、喜ばれた時には自身も得も言われぬ喜びが込み上げる。例えば申告はないが、実は普段使っていて困っているのではないかという操作を、機能追加に合わせて改修したところ、「ここまで要求していなかったのに、とても使いやすい。ありがとう」という嬉しい言葉がもらえた。他にも、わざわざキーワードを入力せず、別のページに飛べるリンクをつけたり、今まで手動で作っていた棚卸表を、データベースから自動で作成できるようにもしたりした。「要件通りに実装するのは、お客様にしてみれば当たり前のことです。その上でどのように使用されるかを想像しながら、ユーザビリティを向上させることが我々の使命だと気づくようになりました」と辻橋は頼もしく語る。
今後はより少ないステップ、より洗練した形で、システム開発を行っていきたいという辻橋。より一層、サーバやアプリケーションの分野に取り組み、活躍の場を広げていきたい考えだ。「開発業務未経験だった私にも、KDDIエボルバはチャンスをくれました。これからも未知の領域へ果敢に挑戦し、成長していきたいと思っています」と笑みをこぼす。

10年に一度のプロジェクトを、改修業務未経験で挑み成功に導くプロ根性。

ネットワークの運用に不可欠な大規模システムの改修

企業の中には独自のネットワークを構築し、メールや電話などのデータをやり取りしている企業がある。閉ざされたネットワークであればそれだけ安全性が高まる上、自社に即した運用もできるというわけだ。KDDIは法人向けにそうしたネットワークサービスを提供しており、構築後もデータベースやサーバなどの運用管理を行っている。
ネットワークを快適に運用するには、365日24時間体制での監視が不可欠だ。例えば道路掘削工事によってケーブルが断線したとすると、その企業のシステムは即座に停止してしまう。ネットワークを提供するプロであるならば、顧客から「つながらない」といった問い合わせが入る前に、発見・修復しなければならない。そこで必要となってくるのが、ネットワークを監視するためのシステムだ。地面の中に無数に張り巡らされたケーブルの、どのケーブルが断線したかを通知するシステム等を作ることで、迅速な対応が可能となる。
2016年上期、ある企業のネットワークを運用・監視するシステムが老朽化してきたことから、それを改修する大規模プロジェクトがKDDIで立ち上がった。KDDIエボルバから出向する形でそのプロジェクトに参加したのが志村だ。志村はおよそ10年に渡り、24時間体制でネットワークを見守る監視業務に従事。その経験が見込まれての抜擢であった。

仮想化という最先端技術を導入

ネットワークを運用・監視するために稼働していたシステムは15もあり、構築されているサーバは約90台に及んだ。サーバは関東5箇所、関西1箇所の局舎に点在。それだけ膨大な数のサーバを更改する本プロジェクトは、10年に一度行うような大がかりなもので、期間は2年を想定していた。
志村が改修業務に携わるのは初めてだ。分からないことだらけであったため、時にはKDDIのメンバーに、何十分にも渡って教えを請うこともあった。長年IT分野で培った経験を活かしながら、一心不乱に食らいついたことで、必要な知識を徐々にものにしていく。
この改修プロジェクトでは、運用監視業務の効率化を図ると共に、サーバの仮想化を図ることが目玉となっていた。従来まではメールサーバ、ウェブサーバ、データベースサーバなど、機能ごとにサーバが必要であったが、現在では技術革新によって仮想化が可能となっている。仮想化とは、例えて言うなら一戸建てと見せかけた建物の中に、何世帯もの住宅を作るようなもの。それによってコストが削減できるだけでなく、何十台ものサーバを監視する必要がなくなり保守も簡素化できる。実際、仮想化によって90台ものサーバを5、6台にすることができた。

古い知識と最先端の知識を融合させ業務を遂行

しかしプロジェクトはそう容易には進まなかった。古いサーバから新しいサーバにデータを移すにあたっては、本当に中身のデータを移行していいのか、調査しなければならない。つまり、このプロジェクトでは仮想化という最先端の知識だけでなく、古いサーバの知識も必要だった。6箇所もの局舎を回って1台1台のサーバにアクセスし、慎重に確認しながら進めた。
しかし、データの仕様や構成を確認するのは難航を極めた。というのも、古いサーバを構築した担当者の所在が不明であったり、データが完全に吸い出せなかったり、「何のために?」と思える独自のツールが入っていたりしたからだ。吸い出せなかったデータは移行しなくても問題ないか随時確認した他、不要と思われるデータでも消さないよう、倉庫のようなサーバを立てる等して対処し、難場を切り抜けた。
さらに、志村たちが構築したサーバの上に別の会社が開発したアプリケーションを搭載する等、3つのシステム会社と連携する必要もあった。確実なものを構築しているはずなのに、別会社が操作すると機能しないなど、大小様々なトラブルが多発。それらを一つひとつクリアしながら、2年がかりでようやくほとんどの改修は完了した。
「今まではシステムを利用する立場でしたが、その裏を知ることができ、大きな学びとなりました。構築する側に立ってみて、モノヅクリの喜びを肌で感じることができたのは大きな経験です。今後はこの業務をさらに深く掘り下げ、極めていきたいですね。利用者視点と構築者視点を兼ね備えたエンジニアとして、活躍の場を広げていきたいと思います」
引き締まった表情が、これからの業務に対する決意を物語っていた。